『愛知県 Y.F様の靴』

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 『愛知県 Y.F様の靴』

 今回のお客様はかなりのスポーツマンです。
 普段は車関係のお仕事をされていますが、
 週末にはテニスの様々な大会で活躍されています。
 Y.F様とは大学のときからの付き合いです。
 大学時代もテニスに明け暮れる生活。
 ときには私のような趣味のテニスにも混ざって、
 打ち方からなにから丁寧に教えてくれました。
 そんなY.F様からオーダーをいただきました。
 懐かしい昔話に花を咲かせながら、
 足の採寸をしたのですが…
 やはり筋肉の付き方が違いました。
 それはずっとスポーツを続けて、鍛え抜かれた足でした。
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 全体的に筋肉のついたしっかりした足ですが
 外側の筋肉が特に強調されていました。
 左右差としてはテニスでストロークをする際、
 軸足となる側の足が足長、幅ともに
 大きいという特徴があります。
 親指の爪部分の高さも一般の人にくらべて
 かなり高いということがわかりました。
 話を聞くと、既成靴では靴下はもちろん
 靴も親指の箇所で穴が空くということでした。 
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 テニスのサーブ、フォアハンド、バックハンド、ボレー…
 それぞれの動きを実際試してみると
 共通して付加のかかる箇所を実感でき、
 今回のY.F様の足の特徴を研究する手がかりとなりました。
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 Y.F様の体格や足の特徴から見えてくる木型のイメージと、
 採寸した数値を近づけていくように木型を制作していく。
 親指の高さを考慮してトウはボリュームのある形に…。
 デザインは外羽根のプレーントウ、
 すこしスポーティーな線を描こう。
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 Y.F様とは大学時代からよく遊び、
 よく食べた思い出があります。
 靴を納品した後、久しぶりに酒を交わして
 語らいました。
 大学のときによく行った
 喫茶店の絶品のオムライス、
 特大ラーメンのはしご事件、
 アルゼンチンサポーターと共に乗り込んだ
 長居球技場(相手は日本代表…)。
 勢いで行動していた学生時代、
 いま思い返すと笑えるエピソードが多い。
 

 
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 南禅寺の山門から。
 私はこの場所が好きだ。
 東京で修行していたときも、
 京都に帰省するとよくここへ来た。
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 山門から、東山を背にして京都の町並みを観る。
 「絶景かな、絶景かな…」
 かの天下の大盗賊、石川五右衛門が詠った風景。
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 私はここに来ると心が休まる。
 高い場所に身を置いて、
 遠く先の風景を見据えて、
 いまの自分の立ち位置を確認する。
 見えなくなっていたこと、
 自分がするべきこと、
 大切なこと、
 いろいろなことに気付かされ、
 気持ちが整理される。
 自分にとって心が洗われる場所なのかもしれない。
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 イヤフォンからお気に入りの音楽が流れてくる。
 つい先日ワンマンライブに行ってきた。
 すばらしい詩を描くアーティストです。
 遥奈さんの「ただいま」を聴きながら…
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『京都府 M.T様の靴』

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 『京都府 M.T様の靴』

 今回のお客様は女性の華道家さんです。
 以前、書かせていただいた「ソウギョバスターズ」の活動で
 M.T様と出会いました。
 足に合う靴がなくて困っていると聞き、
 しかし、当時の自分では何もできず歯がゆい思いでした。
 いつか自分が作った靴でM.T様の足を楽にしてあげたい…
 そんな思いがいよいよ現実に。
 さあ、自分にとっての挑戦です。
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 M.T様は特徴の強い足でしたので、
 木型の制作には苦労しました。
 既成品で足に合う靴がないおっしゃるのも確かにうなずける。
 親指の付け根と小指の付け根にストレスを感じやすいという
 特徴があるため骨格に沿った形状で木型を制作していく。
 くるぶしの位置は比較的低いため、
 当たりがでないラインを何度も検討する。
 仮履きを通して、M.T様から足入れの感覚を共有する。
 木型、パターンを修正し、
 M.T様の足にとって快適な靴へ近づけていきました。
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 いまの自分のできるかぎりを出して
 M.T様の靴を制作できたと思っています。
 何もできなかったあの頃の自分から一歩進めた気がします。
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 今回のコバはヤハズ仕上げ。
 本来の底の厚さよりコバを薄く、華奢に見せることができる。
 昔、日本の職人が生み出した日本独自の技術だ。
 熟練職人さんから当時の話をよく聞いたが、
 話を聞けば聞くほどその時代を生きてみたかったなぁと思う。
 1950年から1964年。
 最も盛り上がっていた手製靴職人の時代。
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 戦後から1950年に皮革統制が解かれ靴産業は復興する。
 この頃、軍靴から庶民が履く靴が主役となっていく。
 「製靴コンクール」という手製靴職人による
 技術を競い合う大会も開かれ、
 日本の職人の技術向上に拍車をかけたそうだ。
 当時のコンクールで金賞をとった靴を見る機会があったが、
 軽やかな、それは美しい靴だった。
 様々な手製靴工場を回って、腕一本で生きる
 流れの職人などもいたと聞く。
 高度経済成長により靴の機械化が始まり、
 手製靴は衰退していくことになるのだが…。
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 靴産業自体が最も活気があった時代。
 もし可能ならこの時代をちらりと覗いて来たいといつも思う。
 ものすごく勉強になると思うので、
 しばらく帰ってこないかもしれない(笑)
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 それから40年の時を経て、手製靴の文化が蘇ることになる。
 ご存知の通り、私達の先輩方が道をつくり、
 それに刺激を受けた私達がこうして手製靴を仕事にしている。
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 今回の撮影は大沢池。
 M.T様と出会った場所。
 この靴が初めて地面を踏みしめる場所をと思ったとき、
 「ソウギョバスターズ」の活動を経て、
 共に修復してきたこの大地をまよわず選んだ。
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 つぎにM.T様が靴を頼んでいただけたときに
 もっとできることがあるように、
 もっと技術を学びたいと思う。
 ひとつ前の自分に、
 常に挑戦していきたいと思ってます。
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『京都府 A.K様の靴』

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 『京都府 A.K様の靴』

 今回の靴はShoe Scapeとしては初めての
 レディースシューズです。
 もう長い付き合いになる同志から靴を作って欲しい
 と頼まれました。
 いままでメンズシューズしか受けていなかったので
 どうしようかと、正直迷いました。
 でもうれしいものですよ、市場に靴は山ほどあるのに
 わざわざ私に靴を依頼してくれたのだから。
 その気持ちに全力で応えたいと思いました。
 
 レディースはベースラストも作っていなかったので
 Shoe Scapeのレディースとしてのベースラスト作製、
 というところから始めていきました。
 本当にいちからのスタート。
 時間をかけて制作を進めていきました。
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 A.K様は建築時代からの付き合いです。
 大学は違うのですがある建築の活動で知り合い、
 なにかと建築について議論し合う仲でした。
 A.K様は大学卒業後、建築事務所で仕事をされているので、
 手がけられている設計プランの話を聞かせてもらえるのは
 会うときの楽しみのひとつです。
 靴作りを仕事にしている今も、建築を見ること、
 話を聞くことも大好きなんです。
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 そんなA.K様からの依頼は仕事の打ち合わせで履く靴。
 かっちりしているがどこか
 かわいらしさが欲しいということでした。
 内羽根のスタイルをベースに
 トップラインに衿をつけて少しかしこまった印象。
 羽を連想させるようなゆるやかな曲線を
 衿の形状に取り入れ、柔らかい印象、
 どこか動物っぽいかわいらしさを演出しました。

 A.K様の足は関節が大変柔らかく、
 変形しやすいという特徴がありました。
 ストレスなく美しいフォルムを出すために
 どのくらい足を絞れるかということが課題でした。
 仮フィッティングを通して
 そのラインを慎重に見極め、木型を制作しました。
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 今回は自転車で鴨川を北へ上っていきながら撮影。
 少し落ち着きはじめた丸太町辺りから鴨川を上っていきます。
 川辺で読書する人、ランニングをする人、
 それぞれが思い思いの時間を過ごしています。
 出町柳付近ではよく学生さんがバーベキュー
 をしたりしていて、また少し賑やかに。
 出町柳からは加茂川と高野川に分かれます。
 私は叡山電鉄(通称:叡電)と並んで流れる高野川
 を上っていきました。
 この辺りまでくると川も風景も落ち着いてきます。
 北山辺りは少し裏に入ると田圃もあり、
 心が癒されます。
 賑やかな町も、のどかな田舎も、
 少し動けばどちらの風景にも出会える。
 京都はコンパクトにできた住みやすいところです。
 四季も豊かで、モノ作りをするのに本当にいい環境です。
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 レディースなので、できるだけ華奢なコバに(ヤハズコバ)
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 今回の撮影では北山で靴を撮りたいと思っていた。
 建築を始めた頃、北山に建築巡りに行ったことがあった。
 高松伸さん、安藤忠雄さん、シーラカンス、
 名建築家が設計した建築が、
 当時、ずらりと北山通りに並んでいた。
 私はスケッチブックを片手に、
 北山へ自転車を走らせたものだった。
 A.K様と会っていたのもたいてい北山付近だったので、
 この靴と共に、あの頃の北山の建築を巡ろうと思った。
 
 凛とした表情で変わらぬ存在感を醸し出す建築。
 もう無くなってしまった建築や、
 空き店舗になってしまった商店建築。
 当時の懐かしい記憶と少しのさみしさと共に、
 誰もいなくなった階段で撮影をする。 
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 初めて北山へ建築巡りに来てから
 もう10年以上の時が流れた。
 このあたりの様子は少しずつ変わっているけど
 自分の原点とも言える場所と再会し、
 あのときの情熱を思い出すことができた。
 あの頃は靴職人になるとは思ってなかったなぁ。
 靴と共にこの場所へ来ることで
 いまの自分を報告できたような
 そんな気がした。
 またいつの日か、この場所へ来ようと思う。
 
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『京都府 A.M様の靴』

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 『京都府 A.M様の靴』

 お客様は大学の教授をされています。
 私が京都に戻り、A.M様に独立の挨拶をしたときに
 うれしい言葉をいただきました。
 「帰ってきた君が作る最初の靴をオーダーしたい。」
 私にとって生涯忘れられない言葉になるだろう。

 A.M様との出会いについて少し話したいと思う。

 出会ったのは学生時代。
 私がまだ建築を勉強していた頃の話…。
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 A.M様は私が通っていた大学の先生というわけではなかった。
 ゼミの先生からの紹介で関わった活動で出会うことになる。

 『2001年 大覚寺大沢池ソウギョバスターズ』

 ここでソウギョバスターズについてごく簡単に説明しておく。
 当時、大沢池は激しい水漏れに悩まされていた。
 十数年前、池に繁茂する水草を除去するために
 ソウギョ(主に草を食性とする魚)が池に放たれる。
 ソウギョは一年で全ての水草を食べ尽くし、
 池の杭まで食べ始める。
 結果、大沢池の激しい水漏れ、水質の悪化
 という問題を引き起こしてしまう。
 大沢池、大覚寺の景観を修復するためA.M氏が立ち上がり、
 2001年に大覚寺大沢池ソウギョバスターズを結成する。
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 私は幸運にもソウギョバスターズの開始から
 この計画に携わらせていただき、
 A.M様と深く関わっていくようになる。
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 さて、出会いから約10年が経ち、
 A.M様の靴を作ることになった頃…。

 2009年 12月、
 これまでのソウギョバスターズの活動の軌跡を一冊の本にまとめ
 『大覚寺大沢池 景観修復プロジェクト
             ー古代と現代をむすぶ文化遺産』
 が出版されました。
 (活動について詳しく知りたい方はぜひ読んでみて下さい)

 そして2010年、
 なんとこの本が日本観光研究学会 学会賞観光著作賞
 を受賞することになりました。
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 それにしてもなんという縁だろう。
 A.M様が学会賞を授賞したタイミングで
 ちょうど私は先生の靴を作っており、
 それが先生と出会ったソウギョバスターズの活動で、
 なんと授賞式に私の作った靴を履いていただけるという…。
 感謝。人生はおもしろいものだ。

 汗まみれになった木々の調査や
 寒い中、泥にまみれたソウギョ捕獲作戦…
 靴職人を志してからも応援し続けていただいたこと…
 いろんなことを思い出しながら靴を作った。
 ソウギョバスターズも、もちろん靴作りも、
 これからも新しい記憶を刻み続けていく。
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 さて、今回のShoe Scapeは
 嵐山にある『中村屋珈琲店』。
 A.M様に連れていただいたのが最初でした。
 建築学生だった私が、靴職人を目指す相談に
 乗っていただいたのも、たしかこの場所だったと思う。
 マスターと昔話しに花が咲き、
 ここで撮影させていただくことになりました。
 A.M様の靴を撮影するには最適な場所だ。
 アンティークな内装が心地よく、時間を忘れてしまうような…
 いつふらりやって来ても、あの頃と時間が続いてるような…
 そんな空間です。
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 写真(下)は 切り絵作家 鎌田沙織さんによる
 中村屋珈琲店の外観を切り絵にした作品。
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 ちょっと暗いところばかりで撮影していたので
 明るいところでの写真を。
 つま先が空を映す。
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 人との出会いはおもしろい、私はいつもそう思う。
 そしていつも人に感謝する。
 私はただ、靴を作るという仕事をしているにすぎないが
 そこにはその人とのストーリーが存在する。
 人との出会いに感謝。
 そしてこれから始まるストーリーを楽しんでいきたい。
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『京都府 H.S様の靴』

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『京都府 H.S様の靴』

H.S様と出会ったの約2年前。
ビスポークに興味があるということで
知人の紹介で食事に誘っていただいたのが始まりでした。
そのころ私はまだ東京で修行中の身。
独立して京都に帰ってきてからじっくり制作に取り組みたい
という思いを理解していただきようやく果たせた約束の靴。
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お客様は狂言師。

お仕事柄、和装が多いのですが
洋装の際にきちんとしたクラシックな靴
を作っておきたいということで
黒のストレートチップをオーダーいただきました。
革はデュプイ社の黒のボックスカーフ。

初めてお会いしてから食事をしながらいろんな話をしてきました。
靴の話、伝統芸能の話、お酒の話、趣味の話…。
たくさんのコミュニケーションをとることで
お互いを知ることができ、
気持ちのこもった仕事をすることができました。
イメージを共有し信頼し合えること。
モノ作りにおいて最も大切なこと。

                            〜 Shoe Scape 〜
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          北区 建勲神社にて
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        今回の底面はカラス仕上げ
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        船岡山公園、船岡山を登る。
          京都の街を見渡す。
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この場所は心が落ち着く。
暖かくなってきた風の流れ
春の香りになった空気の匂い
ただただいろんなものを感じられる。
この靴を送り出す場所としてここを選んでよかった。
いつの日か修理で帰って来たとき
またここへ来よう。
そのときどんなことを感じれるか
いまから楽しみだ。

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